共通テーマ:
日記 テーマに参加中!
【001 奔放な夫婦】1992年7月26日(日)

私と大学時代のバンド仲間 M(ベース)は、よみうりランド・オープンシアター・イースト(野外)で催されたライヴ・アンダー・ザ・スカイに行っていた。

一緒に行くことになっていた某百貨店ギフトサロンに勤務するS(ピアノ、キーボード)は、お客のところに配達されたバターが常温で送られてしまった為、お客の手元に届いた時には、程良く『溶かしバター』となっていたことが昨日発覚し、そのクレーム処理に向かっていた。
「お客の怒りが鎮まれば、合流する。」とのことだった。

『直ぐ使える状態で良かったね!』と思うのは不謹慎か?
そういう私は、高校から大学までドラムを叩いていた。

今日は三つのグループが出演するが、トリを飾るマーカス・ミラーのバンドが私たちのお目当てだった。

このグループにはリーダーのマーカス・ミラー(ベース、ヴォーカル、バス・クラリネット等)のほかにデヴィッド・サンボーン(サックス)、オマー・ハキム(ドラム)等、そうそうたるメンバーが参加している。

1曲目から総立ち、チキン肌状態だった。
オマー・ハキムは色々なバンドで来日すると言われていながら、寸前になって別のドラムに変わるということが今まで幾度かあったので、久し振りに生で聴けた私は、届きもしない大声援を送り続けた。

因みに私が好きな曲は、“Run For Cover”という曲で、当初David Sanbornの“Voyeur”(日本題:夢魔)に収録されていたが、この日に演奏された“Run For Cover”は、アレンジが格段に洗練されていた。
このライブバージョンは、Marcus Millerの“Best Of Marcus Miller”に収録されている。

一組目の富樫 雅彦バンドの演奏中に、ちょっと変わった夫婦が登場した。

遅れて来た彼等は、私たちの席の前の狭い通路を何も言わず、体をブチ当てながら図々しく通っていった。
二人とも、40代半ば位だろうか?
奥さんの方は、異常に若作りをしている。

斜め右5mほど前方の席に並んで腰を下ろした。
前後5列おき位に、低い生け垣で区切られているため、生垣の後ろに座った人々は、その上にお菓子だの弁当だの乗っけてつついている。
件の夫婦も、生け垣の後ろの席だった。

しばらく経って何気なく二人を見ると、奥さんは演奏を聴いているが、旦那は生け垣の上にちょっと厚めの本を開いて、演奏などそっちのけで読みふけっている。
偶然彼が本を閉じた時に見たら、“マイルス・デイビス自叙伝”という渋い本だった。

そう言えば、あのマイルスは昨年(1991年)亡くなってしまった。
マイルスは、確か大学の時に新宿で一度だけ聴くことができた。
音数は少ないが、圧倒的な存在感を覚えている。

じっとしていた彼が、突然動きを見せた。

足元にあった紙袋から何かをゴソゴソ取り出し始めた。
スーパーで売られている、白いトレーとラップに包まれた魚のようだった。

やがて彼は巻かれているラップを剥がし始めた。
本当に魚だった。
それも良い色に焼けた鰻の蒲焼だった。
彼はそれをおもむろに生け垣の上に広げ、箸で食い始めたのだった。

これにより、彼らは少し周囲の注目を集め始めた。

二つ目のグループが演奏を始めた頃、今度は奥さんが負けじと、大きな『森永乳業 ビヒダスヨーグルト 500g』を取り出した。

これを左手に鷲掴みにし、それはもう器用にお箸で食べ始めた。
ヨーグルトを箸で食べるのは結構難しい。
是非、お試しあれ。

そしてついに、奥様は仕上げとばかりに二つ目のデザート、『雪印乳業 リーベンデール 500g』を同様にお箸で召し上がられた。

この頃には周囲の人々の視線は、ステージではなく、完全に彼等に注がれていた。

気に入って戴けたら人気ブログランキングへ

↓Voyeur / David Sanborn



↓The Best Of Marcus Miller / Marcus Miller





最新記事を読む